- essugano
「好奇心を持って、夢中になって、音楽をクリエイトして」

今年10月に、ピアニストの中村紘子先生を講師に迎えて「ショパン・エチュード徹底研究講座」が開催されます。それに先立ち、中村先生インタビューをさせて頂きました。
さすが、一時代を築いてきた方のエネルギーの大きさをひしひしと感じました。そのエネルギーの源は「好奇心」。ご著書『アルゼンチンまでもぐりたい』(中公文庫)などにも興味深いご経験談が数多く紹介されているのですが、とても生き生きとしていて説得力があります。「!」と思った次の瞬間にはもう行動に移す。この直感を信じる強さ、行動力、納得するまで追い求める探究心!だから今でも、常に新しいものを取り込むエネルギーに満ちていらっしゃるのですね。そのクリエイティブな精神が、ピアノ演奏にも現れています。
今年4月に行われたリサイタルは、8ヶ月に及ぶ病気療養期間を経て久々のステージだったそうですが、一切あがることなく、お客様に感動してほしいといった欲もなく、「ただ自分が放った音が自分に返ってきたら、またその音に誘われて弾く・・・ という楽しさを味わおうと思ったのです」。その結果、ご自身として初めての演奏の境地に達したそうです。心から楽しんで自由になれる時、余計な力や雑念がすべて抜けて、真に音楽と戯れることができる。これは演奏家に限らずとも、誰もが味わいたい究極の境地ですね!
コンクールを聴いていると、個性的なアプローチが増えてはいますが、正しく卒なく、というプログラム構成や演奏もまだ多く見られます。一方審査する側は、若い頃から何かを強く希求し、追い求め、自分の道を切り開いてきたアーティスト。ですから、楽譜をきちんと読んだ上で、演奏者自身の内側からほとばしり出る何か、その人が感じた音楽の魅力、その人にしかない想像力や独創的な解釈、を聴きたいのではないでしょうか。(参考:2015年ショパンコンクール審査員、2012年リーズ国際コンクール審査員インタビューより)
ちなみに、現在ピアニストとして第一線で活躍されている方は、若い頃から「好き!」「楽しい!」という純粋な気持ちで音楽と向き合い、コンクールの舞台も楽しんでいたようです。「好き」という気持ちが、自分や音楽を遠くまで運んでくれる。誰かに評価されることよりも、まず自分自身を肯定できる強さを持つこと、大事ですね。ご興味があれば、連載中の「ピティナ50周年プロジェクト〜子供の教育編1980年代」も合わせてご覧くださいませ。1960年代の会報第1号から、誌面に綴られてきた様々な出来事を振り返りながら、50年間の歩みを追っています。