音を知覚するプロセス・第1~5ステージ
”聴く力”が自分の世界を創っていく

●なぜ今、聴く力なのか?

これまで世界の主要国際コンクールや音楽祭を取材したり、海外の音楽教育を視察・調査してきました。その中で、ふと気づいたことがありました。同じものを見たり聴いたりしても、人によって認識が異なります。たとえば国際コンクールでは同じ曲を複数の人が弾くことがありますが、技術的には同じくらいの能力があっても、演奏やプログラム構成は大きく異なります。才能や感性の違いもありますが、結局のところは”聴く力”に由来しているのではないかと気づきました。それは自分の音を聴く力であり、音楽を認識する力であり、音楽を深く解釈する力でもあります。「どこをどう聴けばいいのか」は教育の原点であり、それが身体や楽器を通して音として現れるのですね。この気づきをまとめたのが、オンライン連載「耳をひらく~グローバル時代の聴力」です。

五感による知覚の割合は、視覚8割以上に対して、聴覚は1割(!)ほどしか使われていません。まだまだ聴覚には潜在能力が眠っているはずです。”聴く力”を高めることは、自分や他者を深く知り、この世界を認識する力を高め、さらには新しい世界を創っていく力になるー。そう願いつつ、現在、音楽を活かしながら耳をひらくための教材を開発しています。

 
●聴覚を通して認識したものが、その人の「世界」に

実は人間には「すべての音が聞こえている」、つまり聴覚はすべての音を受容しています。しかしそれを意味あるものとして認識しなければ、聴こえていないのと同じになります。人間は視覚が優位になりがちなため、聴覚が得ている情報は膨大ながらスルーされることも多いのです。しかし人は、自分が重要だと認知している物事に関しては、どんなに小さな音でも拾います(カクテルパーティー効果)。

どの音を重要だと認識するかは、小さい頃の音環境によってある程度作られます。ですから、どのような言葉や音を聞いて育つかはとても大事です。聴覚には、空間全体を把握する力、時間経過を把握する力、情動をともなって物事を認識・記憶する力があります。聴覚を通して認識したものが、その人にとっての「世界」なのですね。

●音楽を聴いて学ぶ、5つのプロセス

では、人間はどのように音を知覚するのでしょうか。そのプロセスを5段階に分けてみました(右図)。たとえば音楽を学ぶプロセスで考えてみましょう。

まず音楽を聴くと、聴覚が刺激を受けて情動や欲求を感じます(第1ステージ)。次第に学習によってリズム・メロディ・ハーモニーなどの音楽的要素を、部分的に関連づけて認知するようになります(第2ステージ)。部分ではなく全体を聴くようになると、音と音の連なりをフレーズや形式として認識するようになり、楽曲全体の構造や文脈が認識ができるようになります(第3ステージ)。このようにパターン認識ができるようになると、他の楽曲との類似性や関連性を発見できる、つまり異質な中に同質のものを見出すことができるようになります。点と点がつながっていき、一見関係ないように見えるものの間にも繋がりを見出し、世界が広がっていきます。(第4ステージ)。そうして記憶が蓄積・統合されたところに新たな刺激を受けると、より広い視野での解釈や新たな視点からの創造が可能になるでしょう(第5ステージ)。

●有機的なネットワークをもつ脳に

脳にはおよそ1000億もの細胞があり、それらが同時発火によって繋がっていき、次第にネットワークができていきます。ただ散漫に繋がっているのではなく、各領域が有機的に連携している脳が機能的だといわれます(アンダース・ハンセン著、御松由美子訳『一流の頭脳』)。このプロセスを踏みながら、ぜひ耳をひらいていきましょう。

 →第1~2ステージ

 →第3~4ステージ

 →第5ステージ

 

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拙連載「耳をひらく~グローバル時代の聴覚」

 (上記図は連載より引用)

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